旅行といってもただの旅行ではない。一応任務である。旅順に実験中の戦闘機を見に行く。どんな戦闘機か本当に楽しみだ。そんなことを考えていると、国分駅に着いた。ここで乗り換えて、国分から門司までの旅だ。僕は先に座った。列車の中は混んでいる。
「お隣大丈夫ですか?」
僕はびっくりした。なぜなら、17,8の女の子である。
「大丈夫ですよ」
僕は答える。心臓の音が聞こえる。
「では」
話しかけてみる。
「どこまでですか?」
「旅順まで」
「一緒ですね」
「一緒に行きませんか?」
急に言われて驚く。
「大丈夫ですけど…」
「初めてなんですよ、旅順」
「僕も初めてです」
「名前聞いてもいいですか?」
相手から聞かれる。
「高部秋人です。一応、軍人です」
「軍に勤めていらっしゃる!お国のためにありがとうございます」
なぜかお礼を言われる。
「いえいえ」
「あっ、私、名前言ってませんでしたね。東谷幸子です。よろしくお願いします。
「どうも」
よくわからない返事だ。二人での旅が始まる。