太陽が南から西に傾き始める中、列車はエカテリンブルクのホームに滑り込む
ふと、「もうエカテリンブルクか…シベリア鉄道の旅ももう終わりだなぁ」と呟く
彼女はまるで雷の音が響いた時の子供のように丸くなって何かに怯えているように見える
「おい、大丈夫か?」「ここ、エカテリンブルクでしょ?怖い話を思い出しちゃって…」「ロシア革命で皇帝のニコライ2世が家族もろとも処刑された事件のこと?」「そうだよ。100年以上前の話だと言われても,怖いよ」そう彼女が震え声で言うのでリアクションに困って苦笑いを浮かべて「幕末の剣豪が好きな人とは思えないリアクションなんだけどなぁ」と思わず心の声を漏らしてしまった
「まだ発車しないの?」「30分停車だからね。あっでも,その館はもう取り壊されてるよ」「もう…ないの?出てきても大丈夫なの?」と尋ねられる
「大丈夫。俺が守ってやるからな」「本当?」「勿論。というか、俺が君に初めて惚れた時に何て言ったか覚えてる?」それを聞いて頬を染めながら「『惚れた女を大切にし、彼女が傷つかないよう気を配る。そして,時には体を張って彼女を守ること。それは男としての俺の一生モノの課題だ』ってこと?」と訊く
「大正解!さぁ、安心して出ておいで。」そう言うと彼女がハムスターのように出てきた
「どんなシチュエーションでも,やっぱり俺の彼女は魅力的だな」と呟き、彼女が照れる
そして,列車は発車する
明日のこの時間にはモスクワだろう