列車は定刻の5分遅れでオイローパシティに位置するHBFに着いた
「ここが故郷の姉妹都市なのか…」そう呟くと横で彼女が時計を見ながら「ブランデンブルク門、今からなら行けるかなぁ」と呟く
「ブランデンブルク門なら、ここからシュプレー川を渡ってティーアガルテンを抜ければすぐさ。それに、俺たちはEUレールパスを使うんだから、通る国さえ間違えなければ列車は好きなタイミングで乗れるから大丈夫さ。どうせ、ハンブルクかケルンで1時間近く待つんだから」そう言うと、彼女が「森鴎外の舞姫の舞台、行ってみたかったんだ〜」とめちゃくちゃ喜んで早速シュプレー川を渡りに行き、俺は走って追っかける
「この橋の名前知ってる?」そう訊くと、「ここはドイツ帝国の都だったから、帝室の名前からホーエンツォレルンじゃない?」「ホーエンツォレルン橋はケルンのライン川の橋さ。この橋はモルトケね」そう言うと、「モルトケってあの、プロイセンの軍師モルトケ?」「そうだよ。あっでも、俺はビスマルク派なんだけどね」と返すと「あっ、アレ、戦前に放火されて建て直されて冷戦期は立地上の問題で使われなくなって放置されてた建物じゃない?」と彼女が進行方向右側を指差す
「そうだね。昔はあの屋根の上にソビエトの兵士が赤旗を掲げたんだよなぁ…そう考えると感慨深いな」とまたもや歴史談義が始まる
そこで悪戯っぽく、「首都とかけて、俺の彼女ととその心は?」と謎かけを始めてみると「どちらも大好き。違うの?」と訊かれたので「どちらも何度か変わったけど,もう変わらない」そう自信満々に答えると、彼女もつられて笑い出す
偶然か必然か、俺たちの頭上には演習中のドイツ空軍のアクロバット航空隊が描いたハートのスモークが浮かんでいた