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ユーラシア大陸縦横断旅38

ベルリン中央駅を出て最初の停車駅、シュパンダウに着いた
俺たちのボックスは4人掛けなのでさらにもう2人と相席することは分かっていたので、誰が来ても良いように荷物の位置を調整した
すると、中学まで一緒だった幼馴染が乗り込んで来て、俺の向かい側に座った
しばらく談笑していると、向こうは戦後のドイツを研究しており、実地調査でシュパンダウ戦犯刑務所跡を視察しに来たことを知った
だが、問題は俺の彼女だ
「難しい話、しないでよ〜」と言って俺に泣きついてきた
すると、旧友から「スキー教室の余興で歌いまくったアレの舞台、行ったのか?」といきなり質問が飛んできた
「モスクワだろ?行ったよ。彼女と2人で、な。ただ、2人ともその前に観光したペテルブルクでヘロヘロになってオンボロの寝台列車乗って一睡もできないままだったからまともに観光できなかったけど」そう言って頭を掻きながら笑うと、「お前に彼女できるなんて凄いな。」と返された
すると、彼女が「写真撮影が上手で、それでいて複数ヶ国語を操れる、更に私が好きな日本史、特に1番得意な幕末や明治の話でも盛り上がれるという、まさに私には勿体無い最高の彼氏です」と言ってきた
「今言うなよ」と言って呆れた感じを出すが、流石は旅を同じくしてきた彼女と中学の3年間で苦楽を共にしてきた仲間には俺が照れていることがお見通しだったようだ
昔話や近況報告をしていると、デュッセルドルフを過ぎた
荷物を纏めていると窓の外には中央駅へ入る手前の鉄橋が見える
「見ろよ、このラインの水面に映る夕焼け、照れた時の君そっくりだ。見ているこっちがうっとりしてしまう程鮮やかな赤色だ」と言って彼女に呼びかける
その場の全員が頬を染め、その後笑い出す
「ロンドンでアイツに会うんだろ?アイツによろしく言ってくれよ?」「ああ。俺もアイツもお前も3人幼稚園の頃からの付き合いだからな。そっちも元気でな。式の時には呼ぶよ」と言って笑い、分かれる
ブリュッセル行きが接続取って待っていてくれているので、急いで駆け乗る
奇しくも、俺がかつて乗ったブリュッセル行きICEと同じ時刻にケルンを発車する列車だった
橙に輝く一筋の光がガラス屋根を貫く中、列車はベルギーの都、ブリュッセルに向け走り出す

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