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ユーラシア大陸縦横断旅47

まるで韓国のKTXの鼻の部分を潰して平たくしたような顔の車両がガール・ドゥ・ノル10番線に20両編成で停まっている
カレー・ヴィル行きのTGVだ
「お二人さん、そっちは途中のダンケルクまでだけど僕は終点まで乗ることになってるのでよろしく」と幼馴染が声をかける
そして、4人がけのボックスに3人で座ると後の席の客の話し声であることに気付く
「これも運命か」と呟くと「運命?どう言うこと?」と訊かれたので「後ろの席の話し声、ロシア語だ。しかも、声の主からすると俺の元カノ4人組…絶対復縁迫ってくるだろうな」と答えると「池田屋かな?」と彼女がボケてくるので「それも、長州視点のね」と返し、様子を窺う
実際にその客が近くに来て元カノだったことが分かり、気付かれて復縁要請されたが、彼女に話を合わせてもらって福岡をはじめとした日本各地の方言を使い、俺は拙いロシア語で「俺は日本の田舎者で君たちが探している人じゃない」と言って無理矢理押し切った
「あんなのでよく乗り切ったね」と皮肉を込めて幼馴染が声をかけると「東京でもよく使われる相模弁とか多摩弁が自然と出ちゃってボロが出そうでめちゃくちゃ焦った」と返す
彼女からは「あんなの、思いつかん」と言われ、皆で笑っていた
それからおよそ20分、ダンケルクの港のすぐそばにある駅に着いた
俺たちは「ブリテンで会おうぜ」と決め台詞をかまして颯爽と降りる
かつて訪れたブルッヘやハンブルクを彷彿とさせる潮風が西から吹き抜ける

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