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ユーラシア大陸縦横断旅48

シェンゲン協定加盟国のフランスと非加盟国のイギリスの間を往来するなら国境チェックを受けなくてはならない
だから、パスポートには船のイラストと外に出る矢印、そしてDunkerqueと書かれたスタンプが押された
それを見て、「シェンゲン協定圏ともお別れだな。Dankeschön,Europe.Auf Widersinn.」ドイツ語混じりに呟くと彼女も出国審査を終えて出てきた
「ここの砂浜、ダンケルクっていう題名の映画で見たことあるかも」と言ってる
「そりゃそうでしょ。ここ、第二次大戦の古戦場でその映画の元ネタの戦いが起きた街だもん。」と返す
しばらくして、ボーディングが始まる
内装の豪華さのあまり「山下公園から出るクルーズかよ」と思わず言ってしまう
「山下公園?どこそれ?台湾?」と想像の斜め上の質問が彼女から飛んできた
「台湾じゃなくて横浜ね。質問がまるで川上さん顔負けのエグいカットボールだな」と苦笑いを浮かべながら甲板に向かうと、上で「野球経験者ですか?」といきなり日本語で質問される
「プレー経験はほとんどなくてブランク長めですが、バリバリの巨人ファンです。」と答えると
「もしや、君はあの時の…」と返ってくる
そして、俺も相手が小学校時代の東北の姉妹校の同級生だと気付く
「そうさ。俺たちが小5の夏にホームステイでそちらにお世話になった、もう1人の男の子さ。アレから元気だったか?」「僕はいつでも元気さ。春は迷惑かけちゃったけど」「気にすんなよ。まぁスカイツリー行ったのはアレが最初で最後だったけど。そうだ、紹介するよ。俺の彼女で婚約者さ。」
近況報告とお互いの紹介が済むと「どうだい?バッテリー組んでみないかい?」と誘われる
「誘いはありがたいんだけど、俺、彼女と生涯バッテリーなんだよね」と言って断ると「メジャーかよ」と言って笑う
そうして談笑していると、彼女が「あれ見て、海面に夕陽と白い崖が反射して幻想的」と言って目の前に近づきつつある陸を指差しす
「そうだな。となると、そろそろドーバーだ。時間取らせちゃってすまない。また、東京で会おう」そう言ってさりげなくLINEのQRを差し出す
その画面には夕陽が反射して黄金に輝いていた
船が着岸すると同時にジャイアンツ勝利の一報が届き、最後まで笑顔が絶えない船旅だった

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