「へー、親の仕事の都合で寿々谷に来たんだ」
「そうなんです」
坂辺さんと一緒に会話しながら、わたしは学校の近くの通りを歩いていた。
「お父さんがこっちに転勤になって、それで引っ越して来たんです」
坂辺さんは恥ずかしそうに言う。
「ふーん」
わたしはそう言ってうなずく。
「前の学校はどんな感じだったの?」
「え?」
わたしが尋ねると、坂辺さんはポカンとして立ち止まる。
「前の学校…」
坂辺さんはそう呟いてうつむく。
「…あ、ごめん!」
変な事聞いちゃったね…とわたしは咄嗟に謝る。
「別の話しよう!」
わたしはこの微妙な空気を何とかするために、話題を切り替える事にした。