宴の後片付けも済んだ午後11時、幼馴染に質問を飛ばす
「明日はどこ行く?」「そっちは行きたい所ないの?」「バローなんだけど」「北イングランドにある造船の町かい?」「そうそう。あの町は日本を守った軍艦の故郷なんだ」「その軍艦に乗っていた司令官の孫弟子を自称する君なら行きたいと言うだろうね。」「孫弟子?確かに言われてみればそうだ」
そうやって男2人、談笑していると彼女が口を挟む
「私、行き方分からないんだけど」「EustonからLancaster経由だろ?」
そう言って確認を取る「そうそう。ただ、往復に時間かかるよ」「まぁ仕方ないさ。マージー川越えて北上しなきゃいけないし、それでいてあの町空港無いし」「ロンドン行きの国内線が飛んでる最寄りの空港、マンチェスターなんだよね…」「そうそう。ランカスターには空港無いし、マン島やベルファストまで行けば確実なんだろうけど、生憎そのどちらにも船出てないしな」そこまで男2人が話の主導権握っていると彼女は「地図が頭ん中ないからさっぱり分からん」と言って頭を抱える
それを見て「嘘だろ…」と言って俺も頭を抱える
「確かに、君は地図と国旗が昔から好きで何度も見ちゃう何となく頭の中入っちゃってるからなぁ」と言って幼馴染が笑う
「昔は鉄道が好きで、そこから派生して地図と歴史が好きになったんだ。昼は一緒に地図を見ながら、あるいは実際に街歩きをてそこに載ってる土地の歴史の話を楽しみ、夕焼けを2人で眺めて夜は2人で夜景を堪能する。それが俺の理想のデートなんだよなぁ」昔を懐かしむように言うと、「それ、付いていける人少ないよ」と幼馴染が苦笑いを浮かべ、「レベルはかなり高いけど、上手くやっていけるの私しかいないね」と言って彼女も苦笑いだ
「そうそう。君しかいないんだよ。」と言って頷く
「そう言えば明日は早いし、そろそろ寝た方が良いんじゃない?明日の列車8時半だからね。先に寝るよ。おやすみ」そう言って幼馴染は自室へ戻る
「窓開けて換気したら寝ようか」そう言って窓を開けると窓の外に霧の向こうに満月が浮かぶ。感慨深くなっていると、思い出と今を繋ぐ鐘が日付が変わったことを告げる