ロンドン・ユーストン行き最終の特急はイングランド西海岸の田園地帯を南下する
この地方有数の都市、ランカスターを過ぎると車内が騒がしくなる
何事かと思い、幼馴染に見て来て貰ったが、「馴染みのない言語が飛び交っていてよく分からないけど、アジア系の人達が騒いでるというのは分かったよ。」と返ってきた
厭な予感がしたので「ペンと紙、貸してくれないか?最悪の事態になるかもしれないと言う不安があるんだ。それを確かめて来る」と言うと彼は何かを察した様で「可能性は否定できないってことか。行って来な。」と言って筆記用具だけでなく、モバイルバッテリーと充電コードもくれた
「ありがとう。俺、やって来るよ。必ず戻るけん、ちょいと待ってな」そう言って騒ぎになっている場所へ行った
すると、予想通り広東語が飛び交っている
そして、中の人達に割って入る形で漢字を使い、筆談を始める
要約すると、「政治上の問題があり、香港空港に飛行機が入れない。いつまでこの状況が続くか分からない」とのことだ
そして、幼馴染が声をかける
「最悪だ」と言うと「ニュースで知ったよ。でも、大丈夫。全額払い戻しが効くってさ」と言ってくれた
「何のマイレージ持ってるの?」と訊く
「キャセイとスタアラなら持って来てる」と返す
「ブリティッシュ直行で帰れるよ。」と言ってくれたが、当初の予定は変えられずミュンヘン乗り継ぎにして帰る決断をする
幼馴染は頷くが、彼女は不思議そうだ
「確かに、ドイツ経由だと料金は高くなるし、遠回りさ。でも、俺は福岡へ行きたいんだ。帰国したら、俺は大好きな君とはまた会えなくなる。それだったら、また会えなくなる前に君の故郷を見ておきたいんだ」と切り出す
「今まで言えなかったんだけど、私は羽田経由で帰ることになってるんよ。私も貴方と気持ちは同じ。だけど、私は九州だから気軽に東京に行けない。それなら、次はいつ行けるか分からない東京で思い出を作ってから帰りたいの」と返ってくる
「分かった。俺も羽田直行で帰るよ。東京を発つ時間教えてくれたらそれに合わせて周れる場所探すよ」と言うと彼女は笑顔になり、幼馴染も安心した様な表情で「これで仲良く帰れるね」と言っている
列車はゴルフの町、ワトフォードを過ぎたので間も無く思い出の街、愛しの都、ビッグベンのお膝元人によって呼び方が様々あるロンドンに着く