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ユーラシア大陸縦横断旅61

「次はどこ行く?」そう彼女に問いかけると
「市内をタクシーで見たい」と返ってきた
疲れていたので市内巡りでいいと言われて安堵し、恋人繋ぎで来た道を戻り、パディントンからタクシーに乗り込む
俺はイギリスの中流階級の話し方に日本語の発音を混ぜたような英語で、運転手は訛りの抑えた北部イングランド方言の英語で雑談をしていると、「日本からの観光客なんだろ?なら、日本の歌かけてやるよ。歌詞の意味は分からないけど、イギリスを歌ってるみたいだから分かったら歌詞の意味教えてくれよ」と言われたので実際にかけてもらうと、聞き覚えのある曲が流れてきた
そう、俺が昨夜寝言で歌った曲の原曲だった
「ビッグベンの前を左折して川沿いに行き、ロンドン橋を渡って川の南岸を通ってウォータールーに向かってください。ブラックフェアーズ辺りで今の曲をもう一度再生してください。そうすると、時間を計算するとタワーブリッジが見えて来る頃には夕暮れ時なので文字通りの歌詞の風景が見えますよ」と告げると「間奏の後のユーロスターってのはどういう意味で言ってるんだい?」と返ってきた
「『風を切り走るユーロスターみたいに、向かい風も気にせずに走り続ける』、つまり困難には負けずに進み続けるということを歌の中で宣言しているのです」と答えて再び話していると「Look at your bird (Birdとはイギリスのスラングで女という意味。つまり、『君の彼女を見ろ』)」と言われたので振り返って彼女に声をかけると明らかに不機嫌そうな表情で「私って頼りないの?」とだけ返ってきた
「俺の思い出の場所と関東では俺がエスコートするから、俺が不慣れな場所では代わりにお願いできるかな?」と訊くと「その時は任せてよ」と言ってそれまでとは打って変わって笑顔になってくれた
歌の歌詞通り、夕暮れのロンドンに佇むタワーブリッジと彼女の笑顔を見て、後に俺が大好きになるチームで活躍したが新しい応援歌ができてすぐに移籍した選手の幻の応援歌の歌詞を思い浮かべるのだった

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