橘が企んでいると仮定すると、おそらく青路の違和感はその影響…ならば、あの陰キャは被害者か
『青路と体を入れ替えられた』
“まだ仮説の段階だがカマをかけるには十分か…”
小橋はスマホの黒い画面に映ったその悪魔的な笑みにも気づかないほどに夢中だった。
「なぁ青路、お前は今何を企んでいる?」
まずはゆっくり、“青路”があの陰キャだと断定する。
入れ替わったとすればどう考えてもあの日しかない。
あの日のことを聞き出せれば…
「企む?何を?もしかして闇子ちゃんのこと?」
とぼけやがって、このタイミングでそれ以外に企むことなんて…ない…はず…
ん…?待てよ…何で“青路”がとぼけるんだ…?
自分の考えの根底に揺るぎが生じているのが音を立てているようにわかった。
今、俺の行動はどこまで“青路”の…
ダメだ…
今まで見えていたものが…何も信じられなくなる…
「大方、俺が闇子ちゃんに何をしたのか、そしてそれが何の目的なのか知りたいんだろうけど」
次に続いたLINEはそこで区切りられている。
スマホを握る手にじっとりと汗が滲む。
「そもそもあの罰告まで俺は彼女を知らない」
結局待っていたような答えは来ない。
手に溜まった汗が解放され、急激に手が冷えた。
座っていた椅子で手を拭いてすぐに返信を打ち始める。
「いや、ならなぜお前はあんなに…」
そこまで打ち込んだタイミングで“青路”の返信が続いた。
「と言っても納得しないんだろ?」
…?
完全に踊らされているとわかったが、もう後には引き返せないほどこの状況にハマっていた。
「知りたいなら、少し手伝ってくれ」
そのLINEを返すのにもう迷いはなかった。
「わかった…何をすればいい?」
「喪黒闇子を完全に排除したいんだ」
納得と矛盾と、少しの信頼が俺の抱えた復讐心をかつてなく燃え上がらせていた。
to be continued…