「なぁ 恋する気、ない?」
そう言ってしまってから、それだけ伝えたらただの告白じゃないかと後悔した。
案の定清水さんは固まって、耳を赤く染めながら聞き直してきた。
『それは…どういう…』
「んぅ、」
焦りすぎて、声とも呼べない息のような音が喉から絞り出されていった。
それでも彼女は、一音でも聞き逃すまいというようにこちらをじっと見つめていた。
「あ、いや、違うくて」
一瞬彼女の目に浮かんだのは何の色だったか。
この空気から逃げようと、必死に言葉を編んだ。
「ほら!俺、文学部なんやけど」
『…あぁ』
彼女は何かを察知したようで、そそくさと鞄を持ち、帰る姿勢を見せた。
放課後、よく知らないクラスメートに突然、【恋する気、ない?】なんて言われた。
うん。すごく怖い。それは帰りたくもなる。
だけどまだ帰す訳にはいかないのだ。
「文学部で、恋愛小説を書くノルマが出たんよ」
『…うん』
「けど俺恋愛なんて分からんしさ」
ばん、と机を叩く。
ここからが重要だ。
「恋する乙女に意見を伺いたくて」
続ける。
「清水さん、香坂のこと好きやろ」
どやぁ、と言わんばかりに胸を反らすと、そこには今にも泣き出しそうな顔をした清水さんがいた。
鞄を握る手が震えている。
マスクをしているから分からないけれど、彼女が明るい表情でないことは明らかだった。
『大橋くん』
まっすぐ俺の目を睨んで(?)彼女は続けた。
『言っていいことと、悪いことがある』
「そう、やな、、、」
『じゃあね』
遠ざかっていく彼女の足音は、心なしかいつもより大きかった。
やってしまった、と思った。
俺は放課後が苦手だ。
こうやって、黒い思い出が増えていくから。
いつもポエム見ています。私は、La-la.さんのポエムが大好きです❤️La-la.さんのポエムは、心に
しみてくるものもあれば、「放課後コンプレックス」のような不思議な気持ちになり、目が離せなくなるようなポエムがあって大好きです!
これからもポエム頑張ってください!楽しみに待ってます!