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対怪異逃避行:鏡像の怪異 その④

「ッ……!」
今度は流石に予想がついた。鏡の中の俺が腕を『外』に出してくる前に、転がるように回避し、鏡の中の俺の腕は現実の俺の代わりに、すぐ近くにいたあいつの首を捉えた。そう、我が幼馴染の首をだ。
「ぐえっ」
あいつは潰れたカエルみたいな声をあげたが、鏡の中の俺はすぐに、結構乱雑にあいつの首を放してその辺に放り捨てた。
「……ああ、大丈夫だよ、生きてる」
あいつは俺が何か言う前に、咳き込みながらも軽く片手を上げて言ってきた。
「そいつは良かった。心配の言葉をかける手間が減って助かる」
「……けど痛いなぁ、しばらくは首の痛みに苦しむことになるかも」
「それはまあ、ごめん」
「気にしなくて良いよ。……しかしこの怪異、プロだね」
「どこが」
「うっかり捕まえた私をすぐに放した。つまり君しか狙ってない。真面目だ」
「最悪なんだよなぁ」
さっきとは逆にあいつを助け起こしてやる。
「……ああ、君、私と目を合わせない方が良いよ」
「それは察せてるから」
「なら良し」
反射物の悉くから目を離し、とりあえずあいつの後頭部に目を向けながら、昇降口への移動を再開した。

  • 対怪異逃避行
  • ターゲット以外は狙わない怪異の鑑
  • 床がきれいに磨かれてたらそれもアウトっていう
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