「そんな」
わたしは思わずそうこぼす。
でも思い出してみれば、あの時鷲尾さんが坂辺さんのことを見ていたのはそういう事だったかもしれない…
わたしはそう思った。
「んで、どうしてこんな事したんだ」
関係ない人にとっては迷惑だぞ、とネロは言う。
「それは…」
坂辺さんことヌリカベは恐々呟く。
「不見崎さんに、1人にされたくなかったの」
わたし、前いた所には友達ほとんどいなかったから…とヌリカベは続ける。
「でも、寿々谷に来て、不見崎さんと仲良くなって、わたし、嬉しくて嬉しくて…」
ヌリカベはワンピースの裾を握りしめる。
「だから、独り占めしたくなった」
それで他の人に邪魔されたくなくて壁を張ったの…とヌリカベは震える声で言う。
「なるほどな」
だから初めて会った時に異能力を使ったのか、と耀平は腕を組む。
「じゃ、じゃあ、どうしてさっきわたしが席を離れた時に異能力を使ったの?」
邪魔する人はいないよね…とわたしは彼女に尋ねる。