チェックアウトを終え、山下公園で今後の予定を話し合う
「次の宿は何処か決めたか?」「明後日に笛吹の石和」「それまでどこ泊まる?」「俺達は15の町にいるから別行動になるよ。君は牛で休みな。彼女さんは四の宿ね」と言われたので思わず微笑むが、彼女が「どういうこと?」と訊くので、俺は想定外の質問に驚いて沈黙し、仲間もその理由を知っているので黙り込む
仲間の1人が「15+6+3(15区と6郡と三多摩のことで、東京都の前身)を知らない女と付き合って君は良いの?悪いことは言わないから別れる方が良い」と言い、俺は「彼女は無知かもしれないけど、俺からすれば今までお付き合いした女性の中で1番魅力的だから、彼女の方から別れを切り出さない限り俺は彼女と別れない」と返したら火に油を注いだ形になり仲間割れし出して俺と岡山組副長兼運転手が慌てて仲裁するので彼女は状況を理解できていないようだ
状況が落ち着き、彼女が皆を集めて「どうして私達が別れたら良いって思ったの?」と訊くので8人の仲間の1人が「君の彼氏君も含めてこの場にいる男9人は皆東京15区出身なんだ」と答えると「東京15区って?」と訊き返す
すると、別の1人が「東京の内、江戸城近くの町で明治以降は15区と呼ばれた中心部と6郡と呼ばれた郊外を合併して今の東京23区が生まれたのさ」と答え、俺が補足して「15の町ってのは15区時代の名称で言う麹町区の麹町とか番町の辺り、つまり俺の地元の隣町だからこちらで何かあればすぐに駆け付けられるし、その逆も然りってこと。牛は俺の故郷の牛込だから良いとして、四は四谷区で牛込と麹町の隣だから、そちらで何かあっても俺達がそちらに行ける場所だな。俺達が別れた方が良いと言う提言は、俺が帰国してから地元に帰らず、電車1本で地元に帰れる所で連泊した。そんな俺に気を遣って俺達全員なら分かる言い回しで『実家に帰って休んで来い』って言ってくれた。でも、君が変な発言を勘違いしたせいで、俺が君と付き合ってるのが俺の本心からではなくて罰ゲームか何かのせいだと誤解され、そんな俺が惨めで可哀想だと思った。だから、俺達が別れた方が良いって言ったんだと思うよ。」と発言すると残りの8人が頷く
それを見て彼女が「私が無知なせいでこんなことになってごめんなさい」と言って頭を下げるので、俺たちも互いに和解し、浜風を浴びて帰路につく