登り始めてからわずか1時間半で山頂広場に着いた
「あの途中で灯りが所々途切れて橋みたいになってるのが万葉の東歌にも出てくる多摩川、奥の夜景は西新宿…その向こうには俺の地元がある。そして、その更に奥には文京後楽園、桜や彰義隊で有名な上野の山とか下町にある俺の母校がある」と言って2人で故郷の方を観ながら東京で案内しきれなかった場所を解説するが,帰郷してすぐまた故郷に別れを告げて旅立つことを改めて実感し、涙を堪えてるのに、肩が震えてる
「辛い時は泣いたって良かよ。私が付いてる。むしろ,ここまで頑張ってくれてありがとう。地元の近くにいるなら早く地元に帰りたかったよね?それでも,私を選んでくれてありがとう」
その彼女の言葉で堰を切ったように泣き出す
「故郷の山の手台地をもっと見せたかった…1人の男として,東京で,地元でできることは幾らでもあったのに…そう思うとめちゃくちゃ悔しいな…仙台の大敗や博多の2連発の比じゃねえ」と言い切れず言葉に詰まると「貴方は凄いよ。長旅から帰って来たと思ったら,地元の近くで恋人が泊まるからって自分の帰宅を遅らせてまで好きな人に寄り添うなんて,そして自分の地元を離れてでも恋人が地元に帰るなら一緒について行くなんて、私には絶対できん。私はそんなカッコいい貴方が好きだよ」と言って抱きしめてくれるが、山頂で待機してた仲間の1人が茶化して「ノーコンでもカッコいいそこの君,これで涙拭けよ」と言って渡された巨人の黒ユニを見て彼女が「これ,黒ですけど」と返すので思わず「俺の彼女は糸井さんか?糸井さんは現役引退したけど、俺は君の彼氏やめるつもりはないからな?」と言ったら彼女も宮國投手みたいな眩い笑顔を見せてくれたので自然と涙が引っ込んだ
空が白くなり、押上のエセ武蔵(東京スカイツリーは隅田川よりも東、つまり旧下総国にあるのに高さは634mで語呂合わせでは武蔵になる)も見えた
と言うことは、もう間もなく日の出だ