0

Trans Far-East Travelogue⑲

山を越えて静岡県に入り、夕焼けに染まる柿田川公園で休憩と思いきや、兄貴はおもむろに携帯を取って電話に出る
電話を切ったらすぐ、側にいた副長に耳打ちし皆を集めて車に戻り、兄貴から「突然で申し訳ないが、大切な話があるので聴いてくれ。明日、親友が経営するスポーツ関連企業主催で初心者向けの男女混合野球大会が沼津の我入道公園野球場であるのだが、先程の電話で『とある1チームが練習中に負傷者が続出した人数が足りなくなり助っ人を探しているとの連絡があった。経験や性別を問わず、参加してくれる人が見つかったら全員で今日中に直接沼津に来てそのチームの元に行ってくれ』と言われたのでこれからすぐに沼津へ向かう」と言われ、皆納得した雰囲気の中で車は動き出す
俺や兄貴は勿論、兄貴の彼女さんも俺の彼女も出場すると言ったのでカップル2組はスタメン確実、ベンチには残りの男を入れて出場することになった
「本番の球とバットの素材、分かるか?」と訊くと「バットはウレタンかカーボンを選手がネクストに立つタイミング選ぶ形式でJ球、つまり昔のC球の改訂版だそうだ。元々この旅の途中に立ち寄る街に住んでる親戚の子供達と野球で遊ぶ予定があったから、幸い道具は全て積んである」と返ってくる
気付いたら車は目的地に停まったので、外に出て「明日は無双しようや」と言って兄貴に笑顔で声をかけると「彼女には曲がり幅の大きな変化球と火の玉ストレートで緩急付けて甘い言葉囁く癖に、実際の球種は直球しかない人が何か言ってる」と言って兄貴は笑い、俺は恥ずかしさのあまり黙っていると彼女が「私だから受け止められるけど、他の女性には普段貴方が私に言ってるような甘いことは言わないでね」と笑っているが、目だけは笑っていない
「それなら、君も俺以外の男を虜にしないでくれよ?」と返すと「カップルで冷戦始めてどうすんだ」と言って兄貴が笑い、釣られてその場の皆も笑い出す
東京湾とはまた違った輝きを放つ駿河湾の港湾地帯の夜景が輝いている

レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。