想いをチョコにのせて、君に。
…なんて書いてみたけれど
正直バレンタインなんて企業の戦略だと思う。
「なにやってんの?」
バッチリ校則違反の短いスカートに
小さな花を耳に咲かせた彼女が来る。
「バイトのポスター!
もうすぐバレンタインだからさぁ」
「うわ、もうそんな時期かー!」
チョコ会社は売り時だね、なんて彼女は笑う。
「バレンタイン、チョコいる?」
なんでもないように、そっぽを向いて聞いてみる。
「そういうのは聞かないもんなんじゃないの」
色気がないよ、色気が
って彼女はまた笑う。
3年前のバレンタイン。
初めてできた友達との友チョコ交換。
ずっと楽しみにしてきたのに、やっぱりそれは
社会情勢的にも、衛生面的にも叶わなかった。
今年こそは、という思いは
きっと誰にも負けていない。
「手作り大丈夫な人?」
彼女が聞いてくる。
これは、とワクワクしながらも冷静に。
「大丈夫な人」
でもやっぱり気になって。
「作ってくれるの?」
お楽しみに〜ってひらひら手を振って
彼女は教室を出て行ってしまう。
彼女を纏う香りは心なしか
待ち焦がれたチョコレートの香りがした。