0

春を

雪のちらつく朝7時。
凍えるような寒さなのに、身体は妙に熱くって。
「あぁ、やっぱり緊張してんだな」と他人事の様に想う。

大丈夫。
大丈夫だから。
頼むから、落ち着いてくれ!
思えば思うほど騒がしくなる。
無愛想な声が響く。
「解答を始めてください」

夜が明けて、パステルブルーの空の中。
スマホを手に取る。
QRコードを読み取る。
あの曲を聴く。

『僕らは知っている
奇跡は死んでいる
努力も、孤独も
報われないこともある
だけどね
それでもね
今日まで歩いてきた
日々を人は呼ぶ
それがね、「軌跡」だと。』

IDとパスワードを入れる。
震える指で、Enterを押す。

あの日の僕の、
僕らのことを語るには呆気ない、
あまりにも事務的な2文字。
「合格」

ため息をつく。
空を仰ぐ。
空がにじむ。
にじんだ空に、春の匂いが咲いた気がした。

レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。