あいつを腕で拾い上げて首の後ろに乗せ、翼を日陰にしてやる。
「わあ快適。最初からこうしてくれれば良かったのに」
「図々しいなお前。捨ててくぞこの野郎」
「女郎なんだよなぁー……あ、やめて日差しが痛い」
ちょっと翼を開いて懲らしめてやった。すぐに閉じたが。
「まあ大人しく方向をを教えてあげることにしよう。とりあえずそのまま12時方向へー」
「了解」
奴の指示に従って歩き出す。俺の異能『怪獣の指揮者』によって変化したこの身体は、皮膚が熱を遮断するおかげで、サイズの割に暑さに対して快適なんだ。
「……あ、マズい」
「ん、道を外れていたか」
「いや……私の方に問題が」
「どうした」
「この暑さは良くないね。体力がもう……。手、出して」
首の高さまで手を持っていくと、あいつがそこに手を重ねて、また離した。
「あとは……それ見て……」
手の中を見ると、透明な液体が針状に固まっている。
「何だこれ。水か?」
「私の汗」
「気持ち悪ッ」
「失礼だなぁ……。私の異能で、それは……コンパスの役目を果たす、から……」
「……おいどうした」
「体力温存のために、寝ます……」
「寝るなー、寝たら死ぬぞー」
雪山じゃあるまいし、くらいは言い返してくると思ったが、何も返事が無いあたりマジで寝たのか。どうやら相当参っていたらしい。