(……さて。どうしたもんか)
一応、指の先を砂嵐に突っ込んでみたが、一瞬でひき肉にされてしまった。指一本しか入れなくて本当に良かった。人型に戻ればどうせ治るからまあ問題無い。
「…………まあ破れるけどさァ……やりたくねえなァ……」
溜め息を吐いて怪獣化を一度解く。そう、この程度の障害なら、俺の異能で呼び出す怪獣であれば簡単にブチ破れる。しかし、あのレベルの怪獣は自分で化けるにはデカすぎるから、わざわざ召喚しなけりゃならない。勿論、体力の消費も結構なものになるわけで。
「……でもまあ、やらねえとだよなー…………よし、やるか」
十分に距離を取ってから、左腕を砂嵐に向け、意識を手の先に集中させる。
「……『砂鯨』、来ませい」
その言葉で、俺と砂嵐の中間の地面から『そいつ』が飛び出した。数十mはある背丈、先端が二つに分かれた幅広の尾、水かきのある手足、白色のゴムのようにたるんだ皮膚、ハクジラのような形状の頭部と口からはみ出した異様に長い牙。俺の持つ怪獣たちの中で最も巨大で、重厚で、強力な化け物だ。
「ああクソ……手っ取り早く行こう。倒れ込め」
砂鯨の皮膚は高速で回転する砂粒を軽く弾き返し、質量で押し潰すようにして、砂の壁を容易に突き破った。そして地響きを立てながら砂鯨が倒れ込んだ数秒後、あれだけ大規模だった砂の竜巻もきれいさっぱり消えてしまった。
「ご苦労、砂鯨」
声をかけてやると、砂鯨はまた砂の中へと消えていった。さて、この町を砂漠にした犯人の顔でも見に行ってやろうか。