寂しいはずがない
私は元々とうの昔に死んでいたはずの人間だ。
どう死のうが、気づかれようが、気づかれまいが
どうだっていい。
ただ…
“私”に向けられた狂気も私が差し向けたにすぎない。
私はまた…逃げるのだ。
誰かに全てを押し付けて…
そんなことを考えてる間に意識は遠のいていった。
“ここは…?”
見覚えがあるが名前が出てこない。
“確か…小学校の…”
「屋上」というワードが浮かんだ途端、記憶が次々に呼び起こされた。すると背後から
「待って!闇子ちゃん!」
懐かしい声がした。私がフェンスに手をかけてもないことに気づいたのかその声の主は足を止めた。
「ごめんね!私…」
上がった息はたまに言葉を途切れさせ、その焦りを私に突きつけてくる。
「私…何もできなくて…気づいてあげられなくて!」
あの時と全く同じセリフ。
「それでいいの!光ちゃんは私なんかに関わらなくていいの!」
私は今の意思とは関係なく記憶通りのセリフを口にする。
そうか、これはただの記憶なんだ。
なのになんでだろう…胸が苦しくなるのは…
「そんなことないよ!人の価値に差なんてない!闇子ちゃんはもっと輝けるんだよ!」
「そういうのがウザいってわかんないの!?」
優しさに素直になれないのはこの時から変わらない。
「…」
右手を伸ばそうとして躊躇する光ちゃんの姿に申し訳なさを感じつつも当時の私は畳み掛ける。
「光ちゃんに私の何がわかるの?あなたみたいな優等生にいじめられる側の気持ちもいじめる側の気持ちも分かるわけない!」
記憶は残酷なほど鮮明にその語気の反動を私に感じさせる。
「…わかんないよ…」
涙声で俯きながら光ちゃんが小さく言った。
「いじめるとかいじめられるとかそういうのじゃなくても人の気持ちなんかわかるわけないよ」
かつての自分の残酷さに打ちひしがれているところに光ちゃんの声はよく響いた。
to be continued…