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理外の理に触れる者:海殺し その⑦

矢印を数十個辿りつつ歩いて1時間も経った頃だろうか。ようやく奴らを見つけた。あの女王さまに道連れ、その他知らない顔が何人か。その場の異様な雰囲気に馴染んでいる様子から、全員異能者なんだろう。
「ん、お前か怪獣。ご苦労だったな。良いもの乗ってるじゃないか」
砂が固まってできたパラソルの下で、水の塊をクッション代わりにして寝そべった女王さまがこっちに手を振ってきた。
「このや……この女郎……」
殴ってやろうかと拳を握りしめると、別方向からも話しかけられた。
「あ、おかえりー。何か頑張ってくれたみたいじゃない」
道連れも砂でできたデッキチェアに腰掛け、素足を地面からわき出す水に浸しながらこっちを見ている。とりあえず片手を挙げて応える。
「わん」
また別の声。こっちは聞き覚えがある。
「……その声、狼か」
「うん」
女王さまと同じか少し下くらいの年齢の、狼の耳と尻尾を生やした少女が、別の少女に捕まっている。
「さすがにあの竜巻は私じゃ破れなかったから助かった」
「そうかい」
「こっちはうちのお姫様。雪を降らせてた異能者」
そいつも会釈してきたのでこっちからも会釈で返す。
「何だよぅ、私にだけ邪険じゃないかぁ?」
女王さまがわざとらしくすねたように口をとがらせる。
「うるせえ。パシってきた奴に振り撒く愛想なんざ持ち合わせてねンだ」
ビビらせてやろうと火を吹こうと口から肺にかけて部分的に怪獣化し、牙を打ち合わせた時だった。
「駄目だよ、きみ」
誰かの手が背中に触れ、身体の動きが突然に止まった。

  • 理外の理に触れる者
  • 火を吹くのに牙を打ち合わせる理由は追々
  • 出てくる能力者の数がやばい
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