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理外の理に触れる者:蝶と鴉と猫 弐

ガラス戸を開けて外に出ると、外は曇り空だった。
雨じゃなければいっか、と黒羽は肩にカラスを乗せたまま歩き出した。
…黒羽の住む街外れはとにかく和風建築だらけだ。
昔からある古い家ばかりで、いつも見ていると飽き飽きしてくる。
しかし流行りの洋風建築が増えている街の中心部も、なんだか黒羽には性に合わない。
だからこの街外れに留まっているのだ。
もちろん、街の中心部には自分の居場所なんてどこにもないからと言うのもあるのだが…
「…」
黒羽は見慣れた街並みを眺めながら歩き出した。
「なぁ、お前」
左肩に乗るカラスが黒羽に話しかけてくる。
「さっき夢は見てないとか言ってたけど、本当は見てたんだろ」
黒羽は思わず足を止める。
「…やっぱり、見てたんだな」
オレ様にはお見通しさ、とカラスは笑った。
「で、どういう夢を見てたんだ?」
教えておくれよとカラスは黒羽の顔を覗き込む。
「…」
黒羽は暫くいやそうな顔をしていたが、すぐに諦めてこう語り出した。
「昔、屋敷にいた頃の夢だよ」
そう言いながら黒羽はまた歩き出す。
「正妻の子じゃないからって理由で疎まれて、屋敷の離れに閉じ込められていた、あの頃の夢」
そう聞いてカラスは、今もあまり変わらなくねぇか?と呟く。
「だってお前、ちょっと前に屋敷から追い出されて、街外れのあの家に引っ越してきたばかりだろう?」
場所が変わっただけで、屋敷の人間から疎まれていることに変わりないじゃねぇか、とカラスは続ける。

  • 理外の理に触れる者
  • この物語の時代設定は近代ということになってる
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