起きたばかりの鉛のように重たい瞼を動かした視線の先には見慣れた字で「人生初ワンマンライブ」と大きく記された卓上カレンダー、用意周到に準備したリュック。それらは私の頬を緩ませるのには十分な材料だった。
予定通りに当日限定カラーのタオルを購入し、たくさんの人で溢れる大阪城ホールの座席に座った。17時4分、照明が暗転するのを筆頭に開演の合図がした。手始めにと言わんばかりに空恐ろしい灰色と白色の照明はステージを照らし、会場全体にシンバルの音が響いた。
一曲目は自身4枚目となるフルアルバム『For.』の先頭を彩った「New World」はVo.Gt.の片岡健太さんが鋭利な歌詞を力強く歌い上げ、間奏ではDr.Cho.の荒井智之さんのドラムソロは会場を奮い立たせた。
間髪を入れずに「Glitter」の意気揚々としたメロディはジェットコースターに乗っているような新鮮な感覚にさせた。
三曲目に移る前、「大阪、もっといけるよな!新しいものを見せてくれ!」と片岡さんの掛け声が表していたものは、sumikaの音楽の醍醐味である「合いの手」だった。約三年前、突如として得体の知れない病疫が猛威を振るわせ、今までに声を出せなかったからこそ俺たちに伝えてくれ、という強い気持ちは「ふっかつのじゅもん」で拡張された。
韻を踏んでいる歌詞が特徴的な「何者」、代表曲とも言える「Lovers」はアウトロのリズムでGt.Cho.の黒田隼ノ介さんと片岡さんの左足がシンクロしていて、自然と笑みが溢れた。
五曲を突っ走り、ここでMCを挟んだ。
「今日を一番にできるように歌います!」一言一言を丁寧に紡ぐ片岡さんの姿を言葉で表すならば誠心誠意と言えるだろう。
更にギアを上げるように告げた「10時の方角」、Key.Cho.の小川貴之さんが歌い上げた「イコール」はメンバー、そしてお客さんの歌声によって血色を増し、付かず離れずのもどかしい幼馴染のような関係の距離を伝える「いいのに」。そして、純粋無垢で曲がり角一つない愛を描く「透明」はそれ以外何も要らない、何も濁さず透き通った状態で伝えたいだけ。その「ただひとつだけ」の大切さが痛烈に染み渡った。