一度座るように促され、片岡さんが切り出した話はsumika[camp session]についてだった。目を凝らしてステージを見ていると、見覚えのあるカホン、そして黒田さんが持っていたものはアコースティックギターだった。先程までのセットとは一風変わったものに変更し、ミニアルバム『Sugar Salt Pepper Green』のオープニングを飾る「知らない誰か」の他に「アネモネ」「春風」と続いた。
再び暗転したステージにはただ一人、片岡さんがポロンポロンと音を奏で、Aメロを歌い始めたと思った刹那、声出しが可能になったライブに感動したあまり、声が裏返ってしまったのだ。Take 2となった「ファンファーレ」は夜を駆け出していく様子を爽快に綴った。
一万一千近い人がサビを歌い上げた「ソーダ」「Flower」を歌い上げ、「The Flag Song」は眩くて細い光が何本も重なり、ステージ全体が深紅の海に包まれた。
合いの手が特徴的な「イナヅマ」、歓声が地を鳴らした「Shake&Shake」、区切りを告げるための歌「Lost Found.」、心の言葉を言い表す様子を描いた「言葉と心」で本編は幕を閉じた。
アンコールの拍手の喝采が降り注ぎ、再び演奏が始まった。
「フィクション」「雨天決行」「伝言歌」の三曲は彼らの音楽人生を表すのには必要不可欠なピースだった。
そしてラストのMCでは、脳に響き渡る深くて優しい片岡さんの言葉は糜爛な私の心を包み込み、とめどなく溢れる大粒の涙は抑えることなど出来るわけでもなく、頬を伝ってマスクにしみをつけていった。
自分なんてこの世から消えてしまえば良いのかもしれない、そう思った事も少なくはなかった。しかし、sumikaを信じれば必ず傷は瘡蓋へと変化する、と無意識のうちに全細胞が脳へ信号を出し続けた結果、ライブ当日までの約三ヶ月間の学校生活を頑張れたのだ。
「私は、sumikaの音楽、ライブ、バンド全てを愛している。」
たった一つの事実が今回の公演によって形成され、私の将来の夢を建築する頑丈な核となった。誰に何を言われようとも、この事は絶対に揺るがせない、守りきりたいのだ。ライブの余韻が明白に浮き出てきた頃、sumikaの音楽を自ら届けていく存在になりたいと紺色に染められた空に強く誓った。