「…今の方がマシだよ」
自由に外へ出られるしね、と黒羽は呟いた。
「ふーん」
でもさ、とカラスは言う。
「お前屋敷を出てから命を狙われてばかりじゃないか」
そういう意味では屋敷に閉じ込められてた方がよかったかもな、とカラスは黒羽の方を見る。
「別に構わないし…」
そう言いながら、黒羽は目の前を通りかかった黒い蝶に手を出す。
軽やかに舞う黒い蝶はふわりと黒羽の指先に留まったが、その途端にぽとりと蝶は地に落ちてしまった。
「あー今回もダメだったかー」
「お前本当に力の制御下手だな」
力を持ち始めて何年になるんだよ、とカラスは文句を言う。
「仕方ないもん、練習する機会ないんだし」
黒羽がそうぶつぶつ言っていると、彼らはふと妙な気配を感じた。
「これって…」
「ああ、もしかして」
黒羽とカラスがそう話し合っていると、急に物陰から黒い何かがとびかかってきた。
「!」
「下がってろ黒羽‼」
黒羽の肩に乗るカラスがそう言いながら黒い何かに飛びかかる。
その姿は黒いボロ布のような姿に変わった。
「コイツ‼」
カラスの姿をしていたモノがそう言いながら、黒い何かに覆い被さる。
黒い何かは暫くジタバタしていたが、すぐに動きは大人しくなった。
カラスの姿をしていたモノがふわっと飛び上がると、そこにはボロボロになった黒ネコがひっくり返っていた。
「ネコ…」
黒羽は思わずこぼす。