世界三大記念艦の一つ、三笠の観覧を終え、公園に戻ると港を見ていた嫁が泣きそうな顔で「男同士で話してる時は生き生きとしてるのに、私と一緒にいると作り笑いしなきゃいけないほどしんどいの?2人きりの時は心から笑ってくれないから」と言う
その嫁の表情で現状を悟り、俺も正直に話す
「俺さ、ある漫画を見てショック受けたんだよ。君を見てると特に鮮明に思い出してしまってね」と返して「俺さ、本当はタメで話せるような親しい相手にはお前って呼びたいんだよ。親しい相手に対してお前って呼ぶことは相手が俺にとって特別な存在だっていうことは男同士なら難なく通じるんだけど、その漫画の主人公の女性は夫からお前呼びされるのか不満だし、恋愛系の記事読んでもパートナーから『お前』って呼ばれるのが嫌な女性は多いそうなんだよ…それ知って、大好きな君が相手でも親しみと敬意を込めるのはダメって言われて、俺のやり方を否定された気がしてショックだった。誇張じゃなくて、本当にイジメとか差別で自分を否定されたあの頃と似たダメージを受けて、君の顔を見る度にそれを溜め込んだ。君に嫌われたくなくて気を遣ってたけど、顔に出てたようだな」と続けると「『お前』って呼ばれるのは私も嫌かなぁ」という嫁の一言に「そうか」と返して黙ってしまう
「でも、もっと嫌なのは、大好きな貴方が傷付いてるのを見ることなの。だから原因を知りたかったけど、実は私が貴方にプレッシャーかけてたなんて知らなかった…気付けなくて、そして傷付けてしまってごめんなさい…」と言って俺を抱きしめながら泣いている
「バカ言え。お前に涙は似合わねえよ」
咄嗟に口から出たその一言のおかげで今まであった憑き物が取れた気がして、自然と笑みが溢れた
それを見た嫁が「やっと笑ってくれた…私、大好きな貴方の笑顔はもう2度と見れないと思ってた…」と言うので「気ぃ遣わなくて普通に笑ってられんの、久しぶりだな」と呟くと「私、『お前』って呼ばれるのはあまり好きじゃないけど貴方に呼ばれる分には悪い気持ちしないよ」と返って来たので「ありがたいな。お前みたいな一生モノの相棒にそんな風に言ってもらえるとこっちも気楽だよ。さぁ、次の場所行こうか。行きたい所あるなら俺、調べっから」と返すと「一生モノの相棒って、そりゃ夫婦ならそうなるでしょ」と言って嫁も笑ってる