後見。そんなものがあるらしいってことは人伝に聞いたことがある。たしかあれは、支配者級の異能者の特権じゃ無かったのか。
「指揮者の中でも、お前ほど異能を制御し切れている奴は見たことが無いぞ。純粋な力で言えば支配者級にも匹敵するあの“総大将”でさえ、既に半分ほど人間を辞めているというのに。『能力を制御する』という観点において、指揮者以下の位階の異能者じゃお前は間違いなく最高の実力者だよ。……ああ、評判を気にかけているなら心配は無用だ。お前の実力は私が保証するし、異を唱える阿呆は『説得』してやる」
「そもそもお前が後見してやれば済む話じゃねえのか」
「嫌だよ。私は可愛い女の子だけに囲まれて生きてたい」
「こいつ……」
とりあえず駿竜を消し、砂漠の異能者の胸倉を捕まえて立ち上がらせる。
「おいお前。名前は」
「え⁉ あ、ああ、えっと、あー、あの、俺は黒崎。黒崎孝太郎」
「長えな。略してクロコって呼ぶぞ」
「あっはい」
「異能『怪獣の指揮者』、二つ名“モンスター”、八街亮晟。クロコ、お前を『後見』する。お前は今から俺の弟子な。俺のことは師匠とでも何とでも好きに呼べ。1時間以内にこの砂漠、消すぞ」
「えっあっ了解」
了承を取ったところで、あの女王さまがけらけらと笑い出した。
「何なんだよお前はァ!」
「いやぁーはっはっはっはっ、悪いね、楽しくて楽しくて。おいクロコ」
女王さまがクロコの方に向き直る。
「お前に二つ名をくれてやろう」
「え、あ、はいどうも」
クロコの方も素直に応じる。
「”海殺し”。あらゆる環境条件に干渉し、土壌の養分と水分を完全に奪い取る、げに恐ろしき世界の破壊者。『砂漠の干渉者』として、これからはその名を使って良いぞ? お前と怪獣のことは、私の異能に乗せてここらの異能者たちに広めてやる」
「う、ウス」
盛り上がっているところ悪いが、今は砂漠を元通りにするのが先だ。女王さまからクロコを引き離し、騒がしいだけのこいつらから離れてクロコに指導する場所を探すために歩き出す。
「行くぞクロコ。お前に異能の使い方を教える。まあ、身に付くかどうかはお前次第だけどな」
「あ、ウス、よろしくお願いします」
何故か無言で俺たちのあとをついて来るその他大勢を何度も追い返すことになったのは、大変腹立たしかった。