「さしずめ動物を操る“異能者”辺りの仕業だろう」
全く、何があったんだかとカラスは呆れたように言った。
「それにしてもお前…これからどうするんだ?」
そんな状態じゃ保って数時間と言った所だろう、とカラスは呟いた。
「…せっかくなら、助けてやろうか?」
不意にカラスが言ったので、黒羽は思わずカラスの方を見た。
「オレ様の異能は“カタチの支配者”だ」
あらゆる生物・非生物の“カタチ”を操作することができる、とカラスは笑う。
どういう、こと、と黒羽が尋ねると、カラスはこう答えた。
「簡単に言えば、異能を使う対象の見た目や性質を自在に変えることができるんだ」
まぁ実際に見てもらった方が早い、とカラスは続ける。
「どうだい、お前…オレ様に助けてもらうかい?」
別にオレ様はどちらでもいいんだが、とカラスは聞いた。
「…」
黒羽は黙って空を見上げる。
このまま死んでもいいと思ったが…せっかく外へ出られたのにここでは死ぬのはもったいない気がする。
それに、誰かが自分を殺そうとしているのは許せない。
「たす、けて」
考え終わる前に声が出た。
カラスはその様子を見てケラケラ笑った。
「じゃあ助けてやるよ」
人間、とカラスは黒羽の傍に飛び寄る。
これで助かるのか、と黒羽はホッとして力が抜けてしまい、すぐに意識が飛んでしまった。