とある学校に勤める用務員氏の話。
その学校の音楽室は学校裏手の駐車場に面しており、そこを掃除している時に生徒たちの音楽の授業と時間が重なると、子ども達の元気な歌声や楽器の演奏の音が聞こえてきて、用務員氏はその場所の清掃作業が特に気に入っていたという。
ある日の事、その日も駐車場の清掃作業に従事していた用務員氏。今日は静かだ、ということは今日この時間は音楽の授業は無かったか、などと考えながら作業を進め、ふと顔を上げた時、自然と目に入った音楽室の窓を見て彼は驚いた。
音楽室の中には何人もの子どもの姿が見え、その動きから彼らが合唱の練習をしているということが見て取れたのだ。
よくよく思い出してみれば、確かに普段その曜日のその時間帯はどこかのクラスの音楽の授業があったはずだ。それなのに何も聞こえないということは、いつの間に防音壁の補強でもしたのだろうか。
そんなことを考え、これからは子ども達の歌声を聞きながらの作業もできなくなるのだろうかと寂しくなりながら、用務員氏は作業を終えた。
しかし翌日、彼が同じ場所で作業をしていると、音楽室からは別の子供たちの元気な歌声が。ならば昨日の無音は何だったのだろうか。
その後、用務員氏は同じ現象に数度遭遇したものの、ついにその原因は掴めなかったという。