寿々谷市中心部から歩いて20分。
閑静な住宅街の片隅を、わたし達は歩いていた。
「ここだぞ」
とあるタイル張りの家の前で耀平が立ち止まる。
見ると表札には、”滋賀”と書かれていた。
「ここが、ネロの家?」
わたしが尋ねると、師郎はそうだぞ?と答える。
「ふーん」
そううなずきながら、わたしは住宅を見上げる。
…と、ピンポーンとインターホンの鳴る音が聞こえた。
耀平がネロの家のインターホンを押したのだ。
暫くの間、ネロの家の扉が開く気配はなかった。
そのため耀平はもう1度インターホンを押そうとした。
その時、ガチャンと扉の鍵が開く音がした。
「…」
家の扉が少しだけ開いて、中から小さな少女がちらとこちらを覗き見た。
「…」
耀平が驚いたように扉の隙間を見たが、ネロは耀平と目が合うと即座に扉を閉めようとした。