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「ちょっと出かけない?」

スタスタでも、テクテクでもなく
プカプカと歩く背中を追う。
手慣れた手つきで切符を買う指先を見る。
「え、小児じゃないよ」
「あぁ、そうだっけ?」
見たこともないような値段の大人切符を一枚
手渡される。
「どこ行くの?」
「…どこ行きたいの?」
「そういうとこが嫌い」
「変わらないねって笑うとこ」
新生活の始まる季節。新品のスーツ、制服。
待ち侘びた春に紅潮する頬。
を見つめる
家出ですか?みたいな格好の2人。
「溶け残っちゃったね」
交互に指を差して笑いかけてくるけど
一緒にすんなよって背中を小突く。
未だに桜は咲かず、夜明けは暗い。
「時の流れは早いねぇ」
「…残酷」
「腐ってる奴は可愛くないよ」
断末魔みたいな音を立てて止まった列車に
促されるままに乗り込んだけど
これって何処に向かってるんだろうか。
ねえ、と声をかけると
まるで次の言葉を察したみたいに
こういうの憧れてたんだよねって笑う。
夢は追えるうちが花だよなあ、って
また困ったように笑ってる。
知ったように頷いてみる。
でも溶け残りの2人はまだ
「君の花は咲くべき時に、きっと咲くよ」
その言葉を、どうしようもなく信じてる。

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