「学校の七不思議」というものがある。
やれ『トイレの花子さん』だとか、やれ『動く人体模型』だとか、うちの学校にも勿論、そういった噂話はいくつか伝わっている。しかし、そんな『七不思議』の中でも、他所では聞かないような奇妙な話が一つある。こんな話だ。
『放課後、完全下校時刻も過ぎた頃に校庭に行くと、隅の方に設置してある一番高い鉄棒の上に腰掛ける幽霊を見ることができる』
この幽霊ってのがどんな姿をしているのか、というところについてはよく分かっていない。大体の話は「遠巻きに幽霊の姿を見て、慌てて逃げるように帰った」という実体験形式の話ばかりで、肝心の部分の作りが甘いんだ。
そして今日、俺はこの七不思議の幽霊を見に行くことになった。
理由は極めて馬鹿らしいもので、仲間内でのちょっとした罰ゲームみたいなものだ。この幽霊に出会うためには、単純に完全下校時刻を過ぎるまで学校に残っていなくっちゃならない。主な『罰』はこっちなんだよな。先生にでも見つかれば面倒だし。
しかし俺は今回、ちょっとした秘策を思いついたのだ。簡単な話、見つかるのが嫌なら、見つからないような場所に身を隠していれば良い。
そんなわけで昼休みのうち見当をつけておいたのが、体育倉庫と体育館の間にある狭い隙間。手入れの全くされていなさそうな植木と建物二つが上手い目隠しになって、よほど注意して見ない限りはそうそう見つからないようになっている。おまけに件の鉄棒もすぐ近くにある。