「何イィーーーーッ⁉」
咄嗟に真上に跳んで鉄棒に掴まり、その勢いのまま逆上がりのように鉄棒の上に避難して顎を回避する。畜生め、うっかりスマホを落としちまったじゃねえか。
「何なんだよあいつはァ!」
思わず叫ぶと、先に鉄棒の上にいたあいつが冷静に答えた。
「さあ……僕は『サメ』って呼んでる。ちょっと似てるし。幸いにも上まで身体を伸ばしてくることは無いけど、困ったことになったね。きみは食われずに済んだけど、どちらにしろ詰みだ。もう逃げられないよ」
「……『は』? 今、『きみは』って言ったな?」
「うん」
「その言い方は……『食われた奴を見たことがある奴』の言い方だ」
「うん」
「お前、さっき幽霊じゃないって言ってたが、絶対にあのサメと関係あるだろうが! 嘘ついたのか!」
「そうだったとして、幽霊相手にすごい喧嘩腰じゃない」
「冷静に突っ込むなよ」
突っ込み返したおかげで少し落ち着いた。とりあえず、幽霊野郎と同じ腰掛けた姿勢で、奴の隣に座る。
「まあ、そう怒らないでくれよ。僕も立ち位置としては被害者なんだから」
幽霊野郎がそう言って俺をなだめてきた。
「被害者だと?」
「そう被害者。だって、僕もそいつのせいでずっとここに縛り付けられてるようなものなんだから」
「知った事か」
「冷たい……」