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輝ける新しい時代の君へ ⅩⅧ

 高校生になって意味が分かった。

 少年は成長して、様々なことを知って、女の格好もとっくのとうにやめた。身長は一六五センチメートルを超えたところで止まってしまったが、重大な病に侵されたり大怪我をしたりすることなく健康に育った。
 地頭が良かったこともあり成績も良好だ。高校受験は無事に成功し、県内でも屈指の公立高校に入学した。感情の起伏に乏しいことや無口なことは変わらず友達はあまりいなかったが、それなりに楽しく生活していた。
それでもあの男について考え続けていた。男の正体も察しがついた。
 だから彼に何があったのか知りたくて、思い立ってからはすぐだった。次の日の正午には、田舎に住む父方の祖母の家の居間にいた。
「一人で来たなんてすごいわねぇ」
 祖母は冷えた麦茶を出しながら感心した。祖母は明るくサバサバした性格の人で、大人しい父親とは性格面ではあまり似ていないが、余裕のありそうな顔立ちはよく似ていた。ただ、母子の関係は良いとは言えなかった。幼少期会うことがなかったのも、それに起因するところがある。
「でも、どうしたの急に」
 祖母が少年の向かいに座って尋ねた。
 来てからずっとそわそわしていた少年は、待ちかねていたように半ば茶托に乗り上げる勢いで質問に食い付いた。
「あの、じいちゃんについて知りたいんだ」
 表情は少しも変わっていなかったが、必死だった。
「あの人について……?」
「うん。じいちゃん、戦争で亡くなったと伯母さんから聞いた。それで気になった。だから、教えてほしい。じいちゃんは何処で亡くなったんだ?どんな人だったんだ?」
 祖母は引き気味に数回小さく頷いた。
「う、うんうん。分かったから落ち着きましょ」
「ア、うん」
 少年は祖母に促されて座り直すと、心を落ち着ける意味合いで結露し始めたガラスのコップの麦茶を一口飲んだ。一呼吸おいて、彼女の俯きがちな顔を伺った。
「珍しい子ねぇ」
 そう言ったきり、しばらくの間俯いて黙り込んだ。

  • 少年、自己肯定感高め
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