両足が鉄棒から離れると同時に、『サメ』が地面から顔を出した。大口を開けて俺の落下地点に待ち受けている。
「そう来るだろうと思ってたぞサメ野郎!」
落ちながら鉄棒に手をかけ、一瞬地面への落下を止める。こっちの目論見通り『サメ』の牙は空を切り、俺の足のすぐ下でガチンと顎が閉じた。顎が閉じて少し安全になった『サメ』の鼻先を強く踏むようにして着地し、すぐに地面に下りて素早くスマホを拾う。電源ボタンを押してロックを解除すると、つけっぱなしになっていたカメラアプリが起動する。
『サメ』の方に目をやると、鼻を踏み潰されたショックから既に立ち直っていたようで、こっちに向かって来ようとしている。
「はい、ちぃー……ずッ!」
奴が目の前まで来たタイミングで、シャッターを切る。フラッシュを『ON』に設定しているんだ。もうかなり暗くなったこの時間帯、文字通り目の前でいきなり強い光を食らえば、それなりにキツイだろう。
奴の進路は狂い、俺を避けてすぐ横を通り過ぎて行った。
「ザマア見やがれ。じゃーな、サメ野郎」
『サメ』に向けて親指を下に向けてから、校門に向けて全力疾走を開始した。あいつが動けないでいるうちに、できるだけ距離を取らなくっちゃな。