「…自分が、いるから」
だからそんな事言わないで、と自分は続ける。
明らかに顔が赤くなるのが感じられた。
「…」
ネロは暫く驚いたようにこちらを見ていたが、やがてニコリと笑った。
「黎は優しいね」
て言うか昔と変わったね、とネロは呟く。
自分が思わず首を傾げると、ネロはこう言った。
「だって昔は周りの事なんかホントにどーでも良い、みたいな感じだったもん」
すごく変わったよ、とネロは笑う。
「…」
自分は増々恥ずかしくなってそっぽを向いた。
「ふふふ」
ネロはそう笑うと立ち上がった。
「独りじゃない、か」
そう呟いて、ネロは一歩前に出る。
「そうだと良いね」
ネロはこちらを振り向いた。
その表情はどこか幸せそうでもあり、どこか寂しそうでもあった。
「じゃあね」
ここで会った事は2人だけの秘密だよ、とネロは言いながら、川にかかる橋の方へ歩いて行った。
自分は1人河川敷の芝生の上でそれを見送った。
〈番外編 ある放課後 おわり〉