「吉代!」
明晶が叫び、吉代は咄嗟に頭を下げた。直後、彼の頭上を伸びてきた腕が通り過ぎ、そのまま明晶の首を乱暴に掴んだ。
「っ!」
「なっ……今役に立つか!」
吉代はデバイスを起動し、拳を腕に叩きつけて千切り飛ばした後、即座に残った腕を叩き落とした。
「助かったよ親友……ワタシの首、大丈夫かな」
「どっぷりカゲに染まってる。切り飛ばすか?」
「冗談言えるってことは無事みたいだね。けど……」
明晶が自身の手首を指すと、デバイスの画面は暗転していた。
「ワタシの光の力はもうからっけつでね。守って?」
「言われなくとも」
侵入してきたカゲに向き合った吉代の背中を眺めながら、明晶は光の力の回復のために新しい缶を開け出した。
2人のいる部屋に、カゲが入ってくる。屋外に蠢いているカゲ達のようなおおよそ人型に近い形状のものとは全く異なり、体高は約2.5m。既に再生している前肢は異様に長く、肘に当たる関節は3か所、指は3本具わっている。
また、老人のように折れ曲がった背中からは6本の触手が生えて滅多矢鱈に暴れており、全身の皮膚は爛れたように剥がれ、随所から垂れ下がっている。
「……これはまた、随分と変わった姿だね」
「気持ち悪いな」
カゲが伸ばしてきた4本の触手を、吉代は次々弾き返す。
「……あ、もしかしてこれがヌシかな?」
「だったら話が早くて助かるけどな……あ」
吉代が防ぎ損ねた触手が、明晶に向かって行く。その直撃より早く吉代が左手を明晶に向けると、光の力で構成された透明な壁が彼女の眼の前に出現し、触手の攻撃を阻んだ。
「悪い、通した」
「だいじょぶ。遠隔シールドもばっちり動くね。あ、親友、これ使って」
明晶の放り投げた刀型P.A.をその場で回転しながら受け取り、吉代は姿勢を低くしてカゲに接近し、抜刀の勢いのまま斬り付けた。カゲはそれを両腕を交差させて防ぎ、触手による反撃を試みた。
「村崎!」
「ああ、バッチリ狙える」
明晶がモニターの裏に隠していた銃型P.A.を取り、カゲの眉間と心臓部を撃ち抜いた。