「あ、まずい!そろそろ行ってご飯作んないと」
その一言が膠着した会話、場を一気に帰る方向へと向けた。正直先に片付けを終えておいてよかったと思った。
「もうそんな時間か」
「確かにちょっとやばいね」
STIは中高一貫全寮制、全学年が住んでいるため、風呂や食事処は班別(部隊別)に使用時間の割り振りがある。出撃や授業でその時間に着かない場合は届出をする必要があるのだが、今回は任務自体は十分に間に合う時間だったので届出はしていない。
「ごめん、今日はちょっと手抜き料理になるかも」
別に当番制でもなんでもないのだがいつも料理は津上の仕事になっている。
「全然いいよ、ってか手伝えることあったらやるし」
津上がいつも料理担当ではあるが俺も大幡もできない訳では無い。ただシンプルに津上には敵わない。
「ありがと、そしたら具材切ったりとか頼むかも」
『了解』
癖づいたその掛け声は3人がやることを共有した合図でもあった。そうして走って寮に着く。それでもこれといって息をあげないのはやはり訓練の賜物だ。
「あ、もう調理室空いちゃってる」
「ってことはもう時間始まってるじゃん!」
どんなに焦っても調理室の前ではきちんと立ち止まる。
『AA0X期部隊、調理室使用します』
中学時代から叩き込まれた集団行動の基礎は必ず守る。ある意味での儀式のように。
「とりあえず煮込むとこまで出来ればあとは部屋でもなんとかなる!急ぐよ」
津上の掛け声で3人はそれぞれの仕事を開始する。
津上は鍋に火をかけた後、肉を適当なサイズに切っていく。ジョーはじゃがいもをブロックに切り、大幡は人参を半月切りにしていく。
時計は刻一刻と時間を刻む。
アラームが鳴る。
それが片付けの合図だ。
「よし、あとは部屋で仕上げだ」
津上がそう言って火を止め、鍋を持ち上げた。
ジョーと大幡は急いで片付ける。
「よし、急いで帰るぞ!」