0

憧憬に泣く 6

「善」
 少年の名を厳かに呼び直した。
 少年の方は気持ちが落ち着いてきたのか前と同じように目を伏せている。
「お前、親友が……よく闘ってくれたらしいな」
 部隊長は言葉をよくよく選んで、優しい口調で切り出した。
 善は未だ何も言わない。
「善。よく聞くんだ。これからスパークラーをやっていれば仲間を亡くすことは間々ある。これは仕方ないことだ。親しい人間を亡くすこともあるだろう。だが、我々はそんなことで止まってはいられない。今だって、いつどこでカゲが発生するかも、それによって一般人がどれほど被害に合うかも分からない。だから、立ち上がれ。強くあれ。お前だって、そんなスパークラーの姿に憧れたんだろ?」
 部隊長は善の目をずっと見ていた。善が彼のことを見ることはなかった。ただ、俯いたまま小さくだが口を動かして何かを言っている。
「どうした、善」
 問うと、段々聞こえる大きさになっていった。
「か……は……和樹は……」
「和樹は、何だ」
 部隊長はそれだけ言って、どもる善の目をジッと見つめ続ける。
 すると、10秒程度経って善は顔を上げて、部隊長の目を鋭く睨んで叫んだ。
「和樹はまだ15歳だった!やっとスパークラーになれたって喜んでた!それを何で!何で守れないんだよ!何で死ななきゃいけなかったんだよ!」
 善はずっと思っていたことを吐き出した。
 和樹が死んで悲しかった。虚しくなった。カゲと闘うのが怖くなった。でも本当は、それで籠もって震えているのではない。
 本当は、本当は――

  • 鏡界輝譚スパークラー
レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。