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×××××中学校の七不思議 甲斐田正秀 4

 そこには少年がいた。坊主頭に学ランをキッチリ乱さずに着ている、俺と同い年くらいの。まさに昭和の子供という様相だ。
 俺は驚いたのと怖いのと意外な展開についていけないのとで、声も出なかった。
 いやしかし、まだ生きた人間でないと決まった訳ではない。話してみれば分かるはず……。
「ええと……」
と思ったが、俺もそこまで社交的ではなかった。一度言葉に詰まるともう喉につっかえて何も出てこない。俺はどうしようもなくなって目を泳がせた。
「お前大丈夫か?忘れモンか?」
 少年が心配する声が聞こえる。それに答えるべきだったが、いろいろな思考が頭の中をぐるぐるして、結局質問には答えずに、俺の方から問いかけてしまった。多分、今俺が一番気になっていることなんだろう。何しろ、このことだけ分かれば何もかも解決するのだ。
「……あんた、名前は?」
「お前分かってないで喋っとったのか。面白い奴じゃのう」
 少年はハハハと声を上げて笑った。そして自慢気に告げる。
「甲斐田正秀だ。お前も聞いたことあるじゃろ」
 それを聞いた途端、胸がざわついた。身の毛もよだつってやつだったろうが、ただ、少し興奮もしていた。一瞬、風邪を引いたような心地になった。
「かっ甲斐田正秀?じゃあ、あんた死んでるってこと……?」
「そうらしいのう。別に死ぬつもりはなかったが」
 その言葉にゾクッときた。背筋に冷たいものが走ったという感じだが、笑いも込み上げてきて、要はテンションがおかしくなっていたのだ。
 いや、待て。
 現実的に考えろ。今俺の目の前にいるのは、ただ甲斐田正秀と名乗り死んでいると自称しているだけの男だ。彼が言っていることを信じられる証拠は一つもない。
 俺はいつの間にか怪訝そうな表情をしていたらしい。少年は……いや、ここは(確信はないが)甲斐田と言うべきか。甲斐田は口を尖らせた。

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