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憧憬に泣く 7

「俺は知りもしない一般人のことなんかどうでもいい!俺がほんとに守りたかったのはっ、俺の大事な人達なのにっ」
 善は目に涙をためて叫ぶ。今まで本当に思っていたことを。
 人々を守るのに憧れたのではなかった。世界だなんてそんな大袈裟な話ではなかったのだ。ずっと、人々の安寧を守り『家族や友人を笑顔にできる』スパークラーに憧れていた。自分の周りの人が幸せに暮らす。それだけで良かった。
 それなのに。
「駄目じゃないか!何もできないじゃないか!スパークラーなんてなった意味ない!」
 善は膝立ちになって荒々しく部隊長の胸ぐらを掴んだ。部隊長はそれを拒まなかった。
「……スパークラーなんて……何もできないくせに……」
 うなだれて呟いた言葉は、高く積もった雪のように重く冷たく響いた。
「なあ善。お前、ホントは思ってんだろ。何もできないのは自分だって」
 部隊長の声はぶっきらぼうだが優しかった。彼の服を無造作に掴んだ手から、ほんの少しだけ力が抜けた。
「でもな、そりゃ見当違いだ」
 それから部隊長は善からなんの反応もないまま続ける。
「……俺の話をするが、俺は、人を守るその勇姿に憧れてスパークラーになった。あの頃はSTIの宣伝を本気にしてた。丁度、今のお前みたいにな。でもな、初めてダチが死んだ時、お前みたいにはならなかったんだよ」
 善は俯いたまま「流石部隊長だよ、強いんだな」と震える声で皮肉を漏らした。強がらないと涙が溢れてくると分かっていた。
「誤解すんな善。俺は強かったんじゃねえ。人一倍弱い人間だったんだよ」
 部隊長の言葉に善はゆっくりと顔を上げた。部隊長は苦しそうに表情を歪ませながら笑っていた。

  • 鏡界輝譚スパークラー
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