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雨傘造物帰路 上

突然降り出した豪雨の中、1人のコドモが折り畳み傘をさしながら歩いている。
左肩に買い物袋を提げながら、そのコドモ…かすみは路地裏を進んでいた。
…と、ふとかすみは足を止めた。
その目の先には、黒い外套を着て頭巾を目深に被った“誰か”がこちらに向かって歩いて来ていた。
「…」
かすみはその人物を目で追っていたが、その人物が自分の傍を通り過ぎる際に何かに気付いたように声を上げた。
「…ナツィ?」
“誰か”はぴたと立ち止まった。
そしてぎこちなく振り向いた。
「…」
黒い外套の人物…ナツィは、気まずそうな顔でかすみを見る。
「どうしたの?」
傘もささないで、とかすみは首を傾げる。
「…」
ナツィは黙って目線を逸らす。
「どうしたのナツィ」
何か…とかすみが言いかけた所で、ナツィが遮るようにこう言った。
「放っとけ」
「え」
かすみが思わずぽかんとして、なんで…と言うとナツィは放っとけ!と語気を強めた。

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