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出来事

 今年の一番の出来事は、なんといっても、嫌な記憶を消す薬が開発され、バカ売れしたことだろう。わたしはもちろん使用しなかったが。
 嫌な記憶を消そうと薬を飲み、すっきりするかと思いきや、今度は二番目に嫌な記憶(この時点では一番嫌な記憶となっているわけだが)がわき、不快になり、薬を飲む。すると三番目の嫌な記憶がよみがえる。嫌な記憶は次から次。しまいにスーパーのレジの列に割り込まれた程度の記憶も異常に意識され、薬を飲み続けることになる。ストレス耐性がなくなってしまうのである。最終的に嫌な記憶は死にまつわるものとなり、死に対する恐怖がふくらみ、その恐怖感を消そうと薬を飲み、廃人になる。犯罪被害にあった等の嫌な記憶を消してしまったため、また同じような被害にあい、今度は亡くなってしまうなんてケースもあった。
 生きものは生存のため、嫌な記憶のほうを強く刷り込むようになっている。だから地球上に繁栄できるのである。
 嫌な記憶を消す薬は販売禁止となり、取り締まりの対象となったが、未だに手を出す者が後を絶たないという。あきれたものだ。年をとれば、こんなものは必要なくなるのに。
 はて、こんな出来事あったっけ。

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