Ⅰ
……まだ時間ございますが、お話は以上でよろしいでしょうか。さようですか。ええ、お代金ですな……こちらになります。
ああ、焦らないで結構ですから。ほら、何か落とされましたよ。……どうぞ。いえいえ、今のお写真、お嬢さんでございますか。可愛らしい。違いましたか、これは失敬。へえ、わたくしの子もですって?何故そうお思いに……ああ、これでございますね。この写真の子供はわたくしの子じゃございませんで。友人の子供でしょうか。この子は何を指差しているのか……それがわたくしにも分からないのですよ。言われるまま撮らせていただいたもので。あの時、尋ねましたが、上手くはぐらかされてしまいまして。わたくしとしたことが、お恥ずかしい。子供には弱くってですね。いやはや、子供とは不思議なものです。我々には見えぬものが見えているのでしょう。何を言い出すのか、いつも楽しみにさせていただいております。あなたもお分かりですか。ええ、この写真の話が気になると。……良いでしょう。それでは、時間もしばらくございますし、のんびりお話ししましょう。
この世にはいろいろとヘンな話があるもので、こんな職業ですから、スピリチュアルとは縁遠いわたくしにも、そういった『持ちネタ』はあるものでございます。とは言ってもわたくしの体験した話などではございません。これは、この写真の子供が話していたことです。
それはこんな話です。