叶わなかった。
彼には「あの娘」がいた。
私の視線の先には、
まっすぐに「あの娘」を見つめる彼がいた。
思い出すのは、二人で帰った通学路でも、
二人きりになった生ぬるい教室でもなくて、
どこからか聞こえた乾いた笑い声と、
ふとした瞬間に合った丸い目だけだった。
どうしてなんだよ、と思う。
心がきゅうっと締めつけられる。
どうしてなんだろう、と思う。
なぜか幸せだった日々しか思い出せない。
今日はまず挨拶をしよう。
未読スルーされたメッセージを確かめて、
ほんの少し浅く、儚い眠りにつく。