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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 16.トウテツ ⑨

「ここが寿々谷の異能力者達の溜まり場になっているのも、この人が異能力者だからだよ」
そうでしょ?とネロがおばあちゃんに目を向けると、彼女はまぁねとうなずく。
「この街は異能力者が多いからね」
仕方ないわ、とおばあちゃんは呟く。
「えー…」
わたしは思わぬ事実に茫然とする他なかった。
「ちなみに彼女の異能力は”トウテツ”」
”特定の人間から欲を奪い取る”能力だ、とミツルはおばあちゃんの方を見ながら説明する。
「あんまりこの店で騒ぐと、アタシが異能力で欲を奪い取るからね」
覚悟しなさいよ、とおばあちゃんは両目を濃紫色に光らせた。
「だからこの店は異能力者達の”緩衝地帯”って言われてんだ」
あんまりケンカできないから、とネロは言う。
「へ、へぇ…」
わたしは意外な事実に圧倒されるばかりだった。
「ま、とにかくそんな事は置いといて」
ネロはそう言って立ち上がる。
「ミツル、お菓子おごって!」
ミツルはあーはいはいと立ち上がる。
「500円以内で選べよ」
「ちょっ、昔の遠足じゃないんだから!」
ネロはそうぶつぶつ言いつつ、駄菓子屋の店内に入っていった。

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