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先生さようなら

「何かあったら、相談室に来なさい。先生もまだ未熟だけど、きくことくらいはできるから」
 そう言って新任の女の先生はにっこり微笑んだ。
 愚痴をきいてあげる、悩みをきいてあげる、助けてあげる、なんていうのは支配欲求の歪んだ表出でしかない。もちろん助けを欲している人間はいるわけだから、需要と供給が上手く成り立っているわけだが。そんな傲慢さに気づかないのか自己欺瞞しているだけなのか、単なる馬鹿なのか、いずれにせよ、未熟な人間に言うことなどない。それときくことだけしかできなんて発言は時代錯誤もはなはだしい。どうせ抱えきれない問題を持ちかけられたらあなたも誰かに相談するのだろうし。まずは自分で手に負えなかったら誰かにタッチするよという合意をあらかじめとっておかないと、いざそうなったときに生徒は裏切られたと感じ、逆効果となってしまう。
「ありがとうございます。……先生、さよーなら」

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