昔々、人間たちはその科学力で栄華を極めました。
その技術の果てに人間たちは“人造人間”を作り出し、人間の代わりに戦争をさせるようになったのです。
際限なく各地で生産される“人造人間”によって戦争は激化し、やがてどこの国も疲弊していきました。
「そうして科学力を失った人間たちが、戦争をやめたのが10年前」
わたしが幼かった頃のことよ、とレンガ造りの建物が並ぶ路地裏の片隅で、座り込む長髪の少女は微笑む。
「じゃあ、人造人間たちはどうなったの?」
戦争は終わったんでしょ?と少女の周りに集まる子どもたちが口々に尋ねる。
「それは…」
少女が重々しく口を開こうとすると、トウカさんと少女の名を呼ぶ声が聞こえた。
少女が顔を上げると、短髪にメガネをかけて太刀を身に付けた少女が立っていた。
「探しましたよ」
行きましょう、アカネさんが心配してますよとメガネの少女は”トウカ“に言う。
「分かったわ、アイ」
トウカはそう答えると立ち上がり、じゃあ続きはまた今度と子どもたちに言って、”アイ“と共にその場を後にした。
「もう、急にいなくなるからびっくりしましたよ」
”みんな“はいつものことだって言ってましたけど、私は相当焦りましたからねとアイは心配そうに言う。
「まぁいいじゃないの」
わたしは出かける先々で色んな人と話すのが趣味だから、とトウカは笑う。
「それに、”命を狙われる“のには慣れてるから!」
「そのジョーク全然面白くないですよ」
トウカの言葉に対し、アイは真顔で返す。
「あなたに死なれちゃ私たちが困るんですよ」
私たちにとって、あなたは希望なのだからとアイは呟く。
「そうかしら?」
わたしはただ自分がなすべきことをしているだけよ、とトウカがアイの方を見た時、前方から声が飛んできた。
「おーいトウカー」
見ると右目に眼帯を付けてキャップ帽を被り、長剣を持った少年が、2人に手を振っていた。
「どこ行ってたんだよ」
心配したぞ、と少年は2人に駆け寄る。
「あら“アカネ”」
探してくれたのね、とトウカが言うと、“アカネ”は当ったり前だろと笑う。